机から腰を浮かせるのと同時に来栖の腕をグイ、と引き寄せてキスをした。

ゆっくりと離れて、覗き込んだら来栖はまるで経験がないみたいな目をしていた。

「なんで…」

「来栖はさ、ずーっと心のどっかで拗ねてんだよ。俺にも、自分自身にも」

「拗ねてる?」

「あの夏の日から、ずーっとね」

「そんなわけない!あの日のことなんて別に全然平気だし!」

「うそ」

後頭部に回した手のひらで来栖の顔を引き寄せた。
強く拒絶することはいくらでもできるのに、来栖はしなかった。

「どんな気分?」

くちびるを離して問う。
囁くような俺の言い方に来栖はゴクッと喉を鳴らした。

「サイテーな気分」

「へぇ?」

くるっと、俺と来栖の位置を反転させて来栖の体を机に預けさせた。

乱暴なキスに、来栖の小さい舌が必死に応えた。

「なんでこんなことするの!」

「なんで拒まないの」

「男子に力で勝てるわけない!」

「あ、また嘘ついた。嘘ばっか。全然力なんて使ってないよ」

「ひどい」

「ねぇ、認めなよ。どう?理解できた?俺に執着しちゃう理由」

「わかんな…ッ…んっ…」

「ほら。がんばって。ちゃんと呼吸しなきゃ」

来栖の目の端に滲む涙。
女はいつだって、涙を流す。