「蜜くんが誤魔化さないでいてくれたから私も正直に言うね。蜜くんがストーカーだって言うんなら、そうなのかもしれない」

「はぁ?」

来栖は脚をクロスさせて、左右に体を揺らした。
駄々をこねる子どもみたいな反応だった。

「怖かったんだ。ずっと蜜くんのことが怖かった。いつか何かとんでもないことをしちゃうんじゃないかって。佐藤さんのことは全然知らないけどさ。蜜くんとのことが噂され始めてからなんとなく雰囲気が変わったなってことは分かった」

「だから?」

「あの記者との事件が起きた時、絶対に偶然なんかじゃないって思って怖くなった」

「女の勘ってやつですか?」

「茶化さないで…お願い。真面目に聞いて」

「真面目だよ。俺はずっと」

「…蜜くんの言う通り。ストーカーだって言われてもしょうがない。あの記者と同じようなことをした」

ガタガタッと窓が揺れて、二人同時に同じ方向を見た。

カーテンを閉め切ったままの窓。
風が強く吹いたのだろう。
静かな教室に、外からピューッと鳴る風の音が聴こえてくる。