「なにを………娘の心はお金で解決できる問題だと…そうおっしゃりたいのですか!?」

「申し訳ございません…申し訳ございません…」

「悪魔…鬼!鬼よこいつらは!!!」

「お母さん…お母さん、もういいから。私は大丈夫だから…ね?」

「アマイ…何を言ってるの…お母さん…あなたのことを想うとどんなに胸が張り裂けそうか…」

「ありがとう。そんなに想ってくれるお母さんが居て、私幸せだし、なんにも怖くないよ。お母さんが居てくれるから救われてる。大丈夫だから…。この人がやったことはもちろん許せない。でも罪の無い娘さんには苦しんで欲しくない」

「口を挟んですみません」

みんなが一斉に俺に注目する。
記者の目にも、もう殺意ほどの力は残されていない。

「彼が貪欲に執着した金で、彼を許すことによって、この人は一生苦しむんじゃないでしょうか」

「私もそう思います」

「一瞬は″許された″、そう勘違いするでしょう。でも決してそうじゃない。金に解決させてるだけで、本人の身体には傷もつかないままこの事件を無かったことにしてしまうんです。罪悪感は一生残るでしょうね。娘さんにだっていつバレるとも分からないですから。一生怯えながら生きていくしかないんです。罪を被ってくれたのは金ですよ。この人じゃない。我々は本心で許す必要なんてないんです。許したふりを、金を受け取る一瞬だけ演じればいい。あとはいつでも復讐できますよ。アマイさん以上の苦しみを。与えることだってできるんです」

「朝之くんの主張は…少々過激ではあるがね…。決めるのはアマイさんとお母様だ。許すも許さないも。アマイさんのお気持ちが最優先だと思います」

「アマイ…」

「お母さん。私も朝之先輩とおんなじ気持ちだよ。お金を受け取ったからって許すわけじゃない。このことを一生背負って後悔し続けてくれれば私も救われる。だから私達は、別に友達でもなんでもないけど娘さんを救ってあげるんだって思って折れてあげてもいいかなって思ってる」