「浅野くん、佐藤さん。掛けて」

「はい」

校長に促されて応接室のソファに座った。

左から校長、俺、佐藤。
三人並んでもソファには十分なスペースが余っているのに、相変わらずクラス担任は佐藤の傍に立ったままだった。

正面に記者とその妻が座っている。
記者は今にも殺しにかかってきそうな目で俺を睨みつけている。

佐藤の母親はサイドに設けられたパーソナルソファに座っている。
まるで最終的にジャッジメントを下す役割を担っているみたいだった。

「このたびは…誠に…」

最初に沈黙を破ったのは奥さんのほうだった。
その震える声を、記者の怒声が遮った。

「頭なんか下げるな!謝罪することなんか何もない!でっち上げだ…冤罪なんだよ!!!」

「佐藤さんが嘘をついていると?」

校長の声は至って冷静だ。

「そうに決まってんだろ!その女が正しいって言うんなら証拠を出せ!」

「まずはこちらをお聴きください」

校長がスッとテーブルにICレコーダーを置いた。

記者が壊した物とよく似ている。

再生ボタンを押すと佐藤を中心に、昨日校長室に集まっていたメンバーの声が流れてきた。

「佐藤アマイさんの証言を漏れなくお伝えする為に録音していました」

全員が静かに流れてくる音声に耳を傾けた。

記者の体は怒りで震え、ラブホテルのくだりになると、遂に奥さんがワッと声を上げて泣いた。