その日、佐藤はそのまま早退することになった。

校長とクラス担任の行動は早かった。
未だに何が不満なのか、気に食わないって顔をして顧問はただ校長からの指示に従って動いた。

佐藤の両親に連絡をして、それから俺が持っていた名刺から記者に連絡、その場に居合わせていた記者の妻とも、校長が話をしていた。
明日、校長室で関係者が集まることになった。

俺は校長欠席のまま、全校集会を開くことを任された。
体育館に集まった全校生徒の前で今回の件について、今後の対策を簡潔に説明し、それから注意喚起を促した。

全ての責任やケアは学園、生徒会が担うことを告げた上で、
この件の当事者へはもちろん、変に騒ぎ立てないことをお願いしたけれど、こんな世の中だ。
夜乃のことだってある。
佐藤はしばらく生活しにくくなるかもしれない。

あれだけ俺との関係を誇示するように振る舞っていた。
今回の件に俺も関わっている以上、ひょっとしたら姿が見えない夜乃よりも佐藤のほうが格好の餌食になるかもしれない。

でもきっと、
佐藤は救われる。

絶望よりも遥かに甘い蜜を吸うだろう。

与えるのは俺だ。

佐藤がそれを望むなら、まともな思考なんて俺が壊してあげよう。

体育館のステージの上。
演説台。

人よりも高い位置から今日も生徒達を見下ろす。

俺が白だと言えばどんなに漆黒でもそれは白だ。

それでいい。
普通なんて物はとっくに手放したよ。

壊れる覚悟があるのなら一緒に壊れよう。
常識なんて全部俺が変えてあげるから。