「写真を…私にも突きつけてきたんです…」

「写真…?これのことか?」

顧問が顎でしゃくるようにテーブルの上の写真を示した。

「朝之先輩に写真を渡したりデータや音声は消去したりしたけど、この人まだ持ってたんですよ。先輩に渡して自分は一切持ってないって顔をして。他にも現像してたんです」

「それで佐藤さんはどうしたの?」

「約束が違うって怒りました。最低だって…そしたらこの人、言ったんです。″最低ならせっかくだからもっと最低になっていいかい″って…」

佐藤の声色を聞いて、クラス担任は佐藤をギュッと抱き締めた。
佐藤は震える声で、懸命に言葉を吐き出した。

「″きみはよっぽど朝之蜜くんのことが大切みたいだね。だったらきみも頑張って彼を守らなきゃ。立派な武器を持ってるでしょ。その武器と引き換えに、今度こそ全てをきみにあげるよ″………そう言ってホテルに…腕を強く引かれました…」

ドカッと重い音がした。
校長がテーブルを拳で殴った音だ。

生徒の身の為に怒りを隠せない校長も、クラス担任もやっぱり「いい大人」なんだと思った。

「ごめん。俺のせいで」

佐藤は小さく首を横に振った。

「必死で抵抗しました…。それでどうにか腕を振り解いて…どうにか鞄からお金を…」

「この写真の金銭だね?これは?」

「私、夜乃さんのお母さんがやってる書道教室に通っているんです。夜乃さんと幼馴染の彼と仲良くなったきっかけもその教室でした。最近はバッシングのせいで教室が開けなくなっていたし、私自身、夜乃さんが失踪してからは通えないでいました。でも最後に習ったときから月謝をお渡しできてなかったのでちょうどその日、お邪魔しようと思って月謝を持ってたんです。それを記者に渡しました。″お願いだからどうかこれで引き下がって欲しい″って…それがこの写真なんだと思います…」

「辛かったわね…佐藤さん。でも本当に…本当にあなたが無事で良かった…」

「校長先生、警察に?」

顧問の声に校長は深く長い息を吐き出した。

それからゆっくりと言った。

「そうですね。これから先の生徒の身を守る義務が我々にはある。野放しにはしておけない。またどれだけの騒ぎが待っていようとな…」