「ここに写真があるってことは買った、ってことかね?」

「いいえ。俺は他人を信用できないタチだから後払いにしたいと交渉しました。″担保は?″と訊かれたので″俺の立場と母の立場″と答えました。前回、母を引き合いに出してますからね。世間的に温度の高い事件に息子が関わっているとなると母の弁護士としての立場にも多少影響があるでしょうから。記者はすんなりと受け入れましたよ。″未来ある未成年にとっては十分すぎる担保だ″ってね」

「なんで卑劣なの…」

「約束通り写真も渡してくれましたし、カメラに残っているデータも、記者ならやってそうだと思って音声も録音中なら消して欲しいとカマをかけたら案の定でした。それも俺の目の前でICレコーダーを壊してまで消去されてます。俺は金銭を渡す気なんて最初からなかったけど」

「お前もとんだ詐欺師だな」

鼻で笑って顧問が嫌な笑みをこぼす。

「いや。それに関しては朝之くんの態度が正しいだろうな。金銭の授受など決してあってはならないことだ。しかし、今後このようなことがあれば必ず教師か近くの大人を呼びなさい。あまりにもきみの行動は危険すぎる。それは褒められたことではないよ」

「すみませんでした。生徒の手本になるべき立場なのに軽率でした。今後気をつけます」

「ああ。そうしてくれ。それで、その件が佐藤さんのことに繋がっているんだね?」

「はい。正直、この出来事で俺もさすがに冷静ではいられませんでした。身近な存在で一連のことを相談できるのは佐藤さんだけでしたから彼女に打ち明けました」

「打ち明けられた日、神様がそうなるように仕向けているんじゃないかってタイミングで記者に声をかけられたんです。だから言いました。朝之先輩を困らせるのはやめてくれって。そしたら…」

「そしたら…?何をしたの、この記者は…」