「後をつけられるような理由に身に覚えは?」

「それは…」

顧問と佐藤の性格では、とことん相性が悪い。
尋問するような口調は佐藤にだけではないけれど、普段からキッパリと他人に対して物を言うタイプではない佐藤にとっては尚更だろう。

それにしても顧問の、どこか演出的な言動はやっぱり好きにはなれない。

今日は取調室で容疑者に尋問をする刑事にでもなったつもりらしい。

「いいよ」

佐藤に言った俺を見て顧問が眉間に皺を寄せる。

「朝之。なんでお前が口を挟むんだ」

「その権利があるからここに呼ばれてるんじゃないんですか?」

「その通りだよ、朝之くん。きみも何か知っているのであれば話して欲しい」

校長が顧問を嗜めるようにゴホン、と咳払いをした。

「みっ…朝之先輩は悪くありません!」

「佐藤さん。ゆっくりで大丈夫よ」

「はい…。この人、言ったんです。″朝之蜜くんのことでお話聞かせてくれないかな″って…」

A4コピー用紙に印刷された、自分の隣に写る中年男性の顔を指さした。

俺に粘着している、あの記者だ。