「校門にも玄関口にも、事務室前にも防犯カメラが設置されていますよね」

「映っていないんだよ」

「え?」

「カメラに残された最後の映像は昨日の夕方七時頃まで。それっきり停止されていて何も映っていないんだ」

「操作できるのは事務室内ですか?」

「そうだ。しかし事務員に聞いても誰も触っていない、心当たりは無いと…」

「誰かが嘘をついてるに決まってるでしょう!カメラの動作について不具合なんて見られなかった。いきなり何台も停止するなんておかしいですよ」

口を挟んだ生徒会顧問を、校長は手のひらを挙げて制止させた。

「全員が真実を口にしているとは私も思っていないさ。ただ″カメラを停止させた犯人探し″よりも、今はもっと重要なことがある」

「何を仰ってるんですか!?重要ですよ!監査に杜撰(ずさん)な学園だってどれほど後ろ指をさされることか…!」

「重々承知だ。しかし、早急に解決しなければいけないのは佐藤さん。きみのことだ。動かなくなってしまったカメラのことよりも心あるきみの事情解明とケアが第一優先だと私は思う」

いい人間、なんだろうなと思う。

防犯対策が行き届いていない学園など最悪に決まっている。
大事な子どもを通わせる親達だって、知れば黙っていないだろう。

それよりも一人の少女の在り方について第一優先だとキッパリと言った校長を、俺は支持したい。
夜乃の件もあるから尚更なんだろうけど。

「拝見しても?」

「もちろんだ」

校長が置いた紙を手に取る。
五枚。
三つ折りにされて等間隔で折れ線が入ってしまっているけれど、
佐藤と中年男性が密会している写真だった。

二年四組に張り出されている物よりも鮮明で、
そこには無かった写真もある。