校門に入っていく生徒達がチラチラと気にして視線を送ってくるけれど、俺は気にしなかった。

見られていたってどうとでもなる。
俺のたった一言で彼らは全てを受け入れる。
俺を否定なんかしない。

人望や信頼関係なんて投げ打って施してきた「洗脳」。

もうめちゃくちゃだ。

堕ちるところまで堕ちなきゃもうどうしようもない俺の人生だ。

「それじゃあまた、必ず。ご連絡お待ちしてますよ」

先日は受け取らなかった名刺を記者はしっかりと俺に握らせてきた。

カサついた、年齢を感じる硬い皮膚だった。

足早に校舎に入って、
けれど自分のクラスには行かなかった。

二年四組。
佐藤と夜乃のクラスにズカズカと入ってきた俺を、教室に居た全員が驚いて見ている。

キャアキャアと黄色い声が俺の肌にまとわりついてくるみたいだった。

友達と談笑していた佐藤が椅子に座ったままぽかんと俺を見上げている。

その手首を掴んで強引に教室から連れ出した。

女子の声が悲鳴に近くなって、
男子の冷やかすような色めきだった声に佐藤は燃えそうなほど顔を赤くした。