「へぇ。そうですか。俺、他人のこと信用できないタチなんですよ」

「でしょうねぇ」

「でも、あなたにだってちょっとは残ってますよね?罪悪感」

「罪悪感?」

「未成年を金で脅してるって罪悪感ですよ」

「…まぁ、雀の涙ほどは」

スッと差し出した俺の手のひらに記者はピクリと眉根を上げた。

「後払いでもいいですか?」

「担保は?」

「俺の立場と母の立場。足りませんか?」

「………いいでしょう。未来ある未成年にとっては十分過ぎるくらいだ。朝之くんのように“完成した″子は特にね。壊しがいがある」

「悪趣味ですね」

記者が俺の手に再び写真を掴ませた。

「データもですよ」

「しっかりしてますね」

カメラ内部のデータを俺の目の前で消去して、更に記者はUSBメモリまで寄越してきた。

「正直物なんですね」

「きみのような人間を欺いたと勘違いすることが一番命取りになるからねぇ」

「経験ですか?」

「はは…まぁそんなところさ」

「じゃあ」

「ん?」

「ボイスレコーダーもありますよね?もちろん。そういうご職業でしょう?」

「は…ハハハハハハ!これは参ったなぁ…はずんでくださいね?報酬」

そこまでしろとは言っていないのに、
記者はジャケットの内ポケットから取り出したICレコーダーをアスファルトの上で力任せに踏みつけて壊した。

「過激派ですね」

「誠意ってやつですよ」