記者が差し出し写真を、引っ込める気はないらしいその手から抜き取った。

公園。
木製のベンチに背を向けて対峙する二人の男。

俺と、幼馴染の彼だった。

「これは?」

「僕のほうが聞きたいですねぇ。これは一体、どういう状況なのかと」

「友人と話している俺、ですか?」

「ご友人…ですか」

ニヤニヤと下品な笑みを浮かべる記者を見ていると、
胸にヘドロのような嫌な物が溜まっていくのを感じる。

「いけませんか?俺に″有名人″の友人がいると」

「ほう。自覚がお有りのようで」

「はぁ…いちいち周りくどい言い方、やめませんか。用件があるのならさっさとおっしゃってください。遅刻しちゃうので」

高い校舎を見上げながら、もう何度目か分からない溜め息を深く吐き出した。

記者が俺の手から写真を引き抜いてひらひらと振って見せる。

「買いませんか?」

「は?」

「この写真、朝之くんがどうしても欲しいとおっしゃるならお譲りしますよ。データもきみの目の前で消去して差し上げます。いかがですか。名門進学校、生徒会長の朝之蜜くん」

「どうしてその写真があったら俺にとって不都合だと思うんですか。俺と彼は顔見知りだった。たまたま″有名人″になってしまっただけで、彼と繋がっていた人間なんていくらでもいるでしょう。俺だけが不都合なんてことは有り得ない」

「きみと会ったその日に彼は死んだ。夜乃とばりとの関係も晒されている。きみの周りでばかり発生している事件、事故。きみの存在はいい燃料になるだろうねぇ」