「その特別はひぃの特別とは違うでしょ。同じじゃないでしょ。だって、りっくんはひぃと同じくらい、夜のことも特別だった」

 自分だけの特別じゃないなら、特別じゃないことと同じなのだと日芽は言った。
 静かに、また大きな瞳から透き通った雫が零れ落ちた。

 どうしていつも、想いの先には誰かを想う横顔があるのだろう。
 いつだって一方通行で、ただ無垢に幸せを願いたいと思うのに、胸の奥に刺さる棘が苦く痛む。その痛みを持て余す。

 それでも、三角形で過ごしたかけがえのない日々が決して形を変えることなくここにあることに、少しだけ安心した。
 過ごした日々を、離した手を後悔することだけはしたくなかった。
 日芽や律にとっても、きっと同じことだろうと思う。だからふたりは、まだ互いの名前を愛おしく呼ぶ。