「……知ってる。全部、知ってるから辛いの」
「告白したこと、後悔してる?」
「してない。言わない方がよっぽど後悔した。
でも、もっと早く言えばよかった。
言ったところで、りっくんはひぃのこと好きじゃなかったかもしれないけど」
「それでも、結果が同じなら言えばよかったのに」
「言えなかったんだよ。……絶対、言えなかった」
「なんで」
「だって、夜がひとりぼっちになる」

 当たり前のようにそう言われて、言葉に詰まる。
 律と、日芽の中に当然のように俺の存在があることが、そして、その事実がこれほどまでに日芽を泣かせる想いよりもずっと欠けてはならないものであることが、俺の頭をゆっくりと下げさせた。
 ふぅ、と長い息を吐いてつくづく思う。

 ふたりは俺と違って優しい。優しいから、その優しさで傷つけ合ってしまう。ふたりは自分以外のふたりを守るためなら、自分がどうなったっていいと思っている。守られた側の人間がその自己犠牲をどれほど厭うかなど、きっと考えもしないのだろう。

 優しくしたい人に優しくされるのは、いつも少し居心地が悪くて、少し愛おしい。満たされることに微かな罪悪感を覚える。

 けれどそういう人でなければ、俺たちは一緒に居なかった。

 俺は返事をする代わりに、呟くように声を唇に乗せた。

「律は日芽のこと、特別に想ってたよ」

 うん、と日芽は小さく頷いた。それから、でもねと続いた言葉に俺は顔を上げる。