「………」
「でも俺は従兄弟である想埜が半妖だと見抜くのに時間がかかった。半妖は珍しいから良い材料になるんだが…」
 海萊は当たり前のように話しているが、想埜は彼らと半分血の繋がった家族だ。家族を材料と言い、視界に入るものと同じ目に合わせようとしている事が残忍で、まるで怪物のように見える。
「こんな小さな村で従兄弟であるというのに叔母の旦那が妖だと知らなかったなんてな~」
「…何が言いたい」
「ご子息さん、あんたのせいじゃないのか? …ずっと隠してきたんだろう。二人も知ってて黙っている事、かなりの重罪だぞ」
 海萊は指を折って数える。
「無報告罪、不法侵入、妖葬班への抵抗、重罪祭りじゃないか」
 けたけたと笑いながら昂枝の肩を軽く叩いた。
「久しぶりに楽しめているぞ」
「……最低な人間だな」
 反面教師のような存在に頭痛が昂枝を襲う。
 肩を抱かれたままこっちだと本題の現場へ引っ張られ歩いて行くと、
「あれだ。左にある部屋にあいつらはいる」
 と彼は指を差す。
 連れられて来た先はまたも鍵で閉じられた部屋。
 閂で閉じられた簡単なものだったが、深守でさえ開けられないとなると、まだ狐のままということだろう。
(それとも…)
 いや、目の前にいるであろう彼らの最悪な事態を考えるにはまだ早い。昂枝は「開けてくれ」と促すと、大人しく海祢はそれを了承する。
 海祢が閂を開き扉を手前へ引くと、扉の先にはしっかりと彼らが存在していた。
「……あ、アンタ……!」
「馬鹿狐ェ…! こんな所にいたのかぁ……」
 昂枝は安堵したように、深守を見ながら呑気に嬉しそうな声をあげた。
「――ということだ。貴様も我々の“実験台”になるがいい」
 海萊は昂枝を部屋へ押し込もうと手を伸ばす。
「っ…昂枝! 危ないわ!」
 深守は咄嗟に叫んだ。その瞬間、海萊が昂枝の後ろから針で何かをしようとするのが見えた。
「っくそ!」
 昂枝は既のことろでそれを躱すと、一蹴り入れる。「やってられっかよ…っ!」
 いくら重罪だろうと今は大人しく捕まっていられない。死ぬのなら全部終わってからにしてくれ! と、一瞬の隙をついて昂枝は今通ったばかりの場所を駆け抜けた。近くにたまたま置いてあった刀を取ると、海老錠に向かってガチャンッ! と勢い良く叩き付けて鍵を壊そうと試みる。
「海祢…!」
 海萊は弟の名前を呼び指示を煽った。海祢も予測していたのか、こちらへと一気に詰める。