「――連れて行け!」
 その一言を受け、古民家周辺にいた妖葬班の班員が数名中へ入ってくる。そこには海祢さんも含まれていた。
「くそっ!」
 昂枝は舌打ちをして妖葬班に斬りかかる。
「深守、逃げましょう!」
 私は深守に声をかける。身体を治したのだから、多少は動けるだろうと思い彼を引っ張り上げた。しかし、上手く立てないのかふらふらと揺蕩っている。身体の大きな深守を支えるのは力がいるが、私は背中に腕を回してなんとか受け止めた。
 だけど、妖葬班の一人が容赦なく襲いかかってきた。武器を持たずとも戦えるよう格闘術を習得している相手に、何も抵抗することが出来ず目を閉じ「きゃあ!」と叫んだ。
 その瞬間、深守は私をぎりぎり残った体力で抱き締めると、扇子でそれを振り切った。
 そのまま流れるように私の方へ力を預け、また、倒れ込んでしまう。浅い呼吸を繰り返しながら、目を虚ろにさせながら、深守は呟いた。
「っ…結望…せめて、アンタだけ……、は…」
 最後まで言い切ることが出来ないまま、彼は意識を失ってしまう。
「深守…っ!! だめよ、目を覚まして…!!」
 だらりと落ちた腕、息はまだしているようなのに、何度揺さぶっても彼は目覚めない。敵は目の前にいる。二人がなんとか庇ってくれているが、限界も近い。
「だあああ!!」
 昂枝は短刀を突きつける。だが、相手はやはり妖葬班。海萊さんとまではいかずとも、実力者揃いだ。足を使い短刀を跳ねると、昂枝の胸ぐらを掴み右足を刈った。思い切り投げられた昂枝は床にゴッと背中を打ち付ける。