端正な顔立ちをしていて、見ていて飽きない。だけど、いつもはすぐ目を逸らしてしまうし、抱き締められても顔が見えない状態だったから、こんなにまじまじと見るのは初めてだった。
 正直、目が離せない――というのが正しかった。
「なぁに? じっと見て、アタシに惚れてるのかい?」
 深守は私に視線を合わせると、楽しそうに茶化す。
「……っちが…!」
「この距離感、接吻できそうよね。アタシで試してみてもイイのよ。んっふふ」
「しんじゅ…冗談でも、だめ…!」
 緊張して体が余計に強ばった。心臓がドキドキと早鐘を打つ。
(私、今顔…絶対赤い……)
 深守は真剣な表情を見せながらゆっくりと手を動かす。
 首筋に彼の大きな手が、触れた。
 それが少し冷たくて、私はぴくりと跳ねてしまう。
「ごめんなさい、今冷たかったわよね…」
「い、いえ…っそんな…」
 私はじっと結び終わるのを待つ。
 早く終わってほしい。だけど、なんだか特別な出来事に、終わってほしくないとも思う。
 ふと、下ろされた深守の髪の毛に視線を向ける。ふわっと、そしてさらっとした腰よりも長い白銀色の髪の毛。
 風に靡く度に美しく、日差しに当たった池水のようにきらきらと。
 私もこのくらい長く、綺麗に伸ばしてみたい。この世の女性の髪は今も尚、長ければ長いほど美しいと言われているから。
 だけど、私は黒くもなければそこまで長くもない。芥子色をした小汚い髪…そう言われて引っ張り上げられたこともあった。
 いつか普通に伸ばせる時が来たら、この人のような髪になりたい。そんな憧れの眼差しを深守に向ける。
「…結望の髪、とっても綺麗ね」
 私は「えっ」と驚く。
 まただった。絶対に彼は私の心を読んでいる…ような気がする。
「………深守には隠し事できない…な……」
 呟くが、深守は曖昧な面持ちで笑った。