「わっ……私は、その……あの」
 次深守と話せたら勇気を出して告白するつもりではあったものの、もっと上手くやるつもりだった。しかし、こんなにも好きしか出てこないなんて、思いもよらず。
 私はあたふたしながら、ぎゅっと目を閉じる。
 あぁ、恥ずかしい。
 顔を両手で覆いながら、感情任せに立ち上がろうとする。一旦逃げよう、そんなことを考えた。
 だけど、それは深守によって止められてしまった。両手首を片手で軽く捕まれ、そのまま膝に下ろされる。終いには頬に手を添えられて、がっちり首が固定されてしまった。これでは深守と嫌でも目が合ってしまうではないか。
 ――それとも、肯定してくれるのだろうか。
 だけど、彼は私を家族として愛しているはずだ。
 なんとなく、返事が怖い。告白の結果を聞きたくないと、拒否する自分が現れた。
「結望」
「あ……、はい……」
 深守の呼び掛けに、私は目を泳がせながら応じる。恥ずかしさと引き換えに、今度は恐怖心でいっぱいだ。恋とは、告白とは、こんなにも人を不安定にさせてしまうのだから恐ろしい。
「結望」
「……っ今の告白は気にし――」
 先駆けて断りを入れようとしたその時。
 深守の唇が、私の唇へそっと触れた。
「…………」
「アタシで良ければ結望の人生を見守らせて頂戴」
 軽く当たる程度の口付けに、添えられた告白の返事が予想外で、優しくて、愛おしくて、また涙が零れ落ちてしまった。
「あぁ……っどうしましょう。また結望を泣かせてしまったわ……。はっ――! そうだわ。結望、お茶飲みましょ。お茶。鎮静剤よ」
 深守は慌てふためきながら、傍に置いてあった湯呑みを差し出した。飲みさしの緑茶が少しだけ入っていたのを、言われるがまま飲み干す。既に冷めてしまっていて、喉がひんやりと凍えた。
「う、冷たい……」
「アッハハこんな時間だからねぇ。寒いし冷めるのも早――」

 ポンッ

「……ぽん?」
 突然の音と煙と共に、目の前から深守が消えてしまった。私は首を傾げてその先を見据えると、小さくなった深守が身体を震わせていた。
「ゴメンね結望、アタシ…所謂病み上がりなのよ……。寒すぎて身体が戻ってしまったわ……」
「わぁぁっ! ごめんなさい深守……っどうしましょう何も考えていなかったわ……っと、とにかく中に入りましょう……っ!」
 私はそう言うなり深守を抱き上げると、その場を後にした。