「…………ん……、あれ………」
 陽の光が自身を照らし目が覚める。
「こ、こは………」
 丁寧に布団に包まれていた私は身体を起こす。カチャリという音と共に手首に違和感を覚えて見てみると、鎖が繋がっていることに気づいた。
(……そういえば)
 折成さんに私からお願いして鬼族の元へ来ていたのだった。だけど、そこからの記憶が一切ない。折成さんと空砂さんの元へ行き、拘束されていた妹さんを私と引き換えに解放して、それから――。
 いつの間に気を失ってしまったのか。
 自身の見た目が本当に奴隷の様な有様で、花嫁とは一体何なのかを改めて考えさせられる。
 着物も寝間着に変えられてしまっているようだし、何より、着ていたものは何処へいってしまったのだろうか。
 笛を握ろうと思って掴もうとするが、着替えさせられた間に笛も奪われてしまったらしい。胸元に感触がない事に気づいて、サァッと血の気が引いた。その瞬間、見計らったかのように「――起きたか」と声が聞こえた。
「…!」驚いて声がした方に視線をやった。障子を開き私を見据えるのは鬼族の空砂さんだ。「………これからどうするおつもりですか?」
 煮るなり焼くなりされるのだろうか。正直、死ぬこと以外なら何されても構わないというか、耐えられると感じているけれど。
「それから……、私のお守りを何処へやったんですか」
 私の大切なお守りが在るべき場所にない。
 私の大切な人、私の事を愛してくれる彼の気持ちを踏み躙られた気がして許せなかった。
 処分されていたらどうしよう、どうしよう、どうしよう――。