『母、さん……?』



当時僕は12歳。中一だ。


パニックになっていたら、母さんが僕を抱きしめた。



『だい、じょうぶ……? 憐夜は、怪我してない……?』

『っ、して、ない……』



そう返事することしかできなかった。


どんどん、伝ってくる血。冷たくなっていく身体。


そして、母さんの頬に伝う涙。



『ごめんね……お父さんから守れなくて……! 守れなくても、ずっと大切に思ってきたよ……憐夜。あなたのことだもの、きっと、可愛いお嫁さんをもらって、幸せに生きるわ……』

『かあ、さん……なに、言って……』



静止しようにも、母さんの口は止まらなかった。


僕をギュッと抱きしめて言った。



『ああ……こん、なに……大きくなって、いたのね……。これからも、そばにいたい……近くであなたの成長、そばで、支えたい……』



まるで最後のような、母さんの言葉。


いや、本当に、最期だった。



『私、いいお母さんだったかしら……? ごめんね、全然いいお母さんじゃなくて……。あとは……ああ、愛しているわ。私のたった一人の子。───生まれてきてくれて、ありがとう』

『あ、あぁ……っ』