私、この前の七夕で何を願ったと思う?

『何気ない日常が、ずっと続きますように』って願ったよ。

こんなに楽しい旅行も、結婚して、忙しい日々を送ったら忘れてしまうかもしれない。

でも……。



「この綺麗な夕焼け空は、何しても忘れない」



私の、情景。

これだけは、忘れないよ。



「昔話なんだけどね、士綺くんに手を拒まれたとき……全部失ったような気がした。もう二度と会えないんじゃないかって、二度と、笑い合えないんじゃないかって」

「そうか……」

「うん。でも、もうそんな心配ないもん。だって士綺くん、拗ねちゃうくらい私のこと大好きだもんね?」

「……椿月」

「っ、ん!?」



からかった瞬間、士綺くんが無理やり口を塞いできた。

触れるだけのキスに、少し……物足りなさが。