午後になっても今日はいい天気だった。
昨日あれだけ星が見えただけはある、きっと今日の夜も鮮やかな星空が見えるんだろうなぁ。

「緋呂ばいばーい!」

「ばいばい~、また明日ね~!」

部活が終わってみんなに手を振って校門から出る。部員は何人かいるけど帰り道まで一緒の子は意外といなくて、ここで別れることが多い。


だからいっつも1人で帰ることになるの。


まだ5時半を回ったところ、この季節の日の入りは遅いから。

しかも徒歩通学だからちょっと時間かかるんだよねー 
歩くのは嫌いじゃないし、むしろ好きな方だけどなんだか少しだけ…

「あ、アジサイ咲いてる!」

こないだまではちょっとずつって感じだったのに今日見たらバァーッて花開いてるじゃん! 

ちょこんっとアジサイの前にしゃがんだ。

「キレイな青色だなぁ」

くすみのないハッキリと濃い青色をしていた。まだ太陽の光が照らしているからそんな風に見えるんだと思う。

「穂月は見たことあるのかな、穂月にも見せたいなぁ…」

こんな明るい時間に出歩くことはないから、こうやって陽の当たる通学路を一緒に帰ることもない。


本当は穂月ともっといっぱい一緒にいたい。


今日学校でこんなことがあったんだって笑い合いながら隣を歩きたい。

夜だけじゃなくて朝もお昼も、穂月といられたらいいのに。


なんて、そんなのあたしのわがままだけど。


「…帰ろ」

すくっと立ち上がった。

今日は天気がいいんだ、てことは夜には会えるしね。夜には一緒に散歩できるもん。

それでいいよ、うんそれでいい。

「早くかーえろっ」

るんっ♬と一歩足を踏み出した。

帰ったら宿題して夜に備えなくちゃ、今日の宿題はなんだっけ?数学と英語と…って考えながら家の前まで。
玄関の柵を押して中に入ろうかなって手をかけた。

「あのっ」

小さな男の子に話しかけられた。

たぶん小学校1年生?2年生?くらいの黒のランドセルを背負って、あたしを見てるんだからあたしに言ってるでいいんだよね?

「えっと…なにか用かなぁ?」

穂月は魔女じゃないって言うけれど、魔女が住んでる家ってことは近所じゃ有名で。

「魔女の家ってここですかっ」

魔女はいるってみんな信じてる。