「ねぇ、穂月」

「んー?」

「魔女はどんな魔法が使えるの?」

「だから何も出来ねぇよ」

使えるくせに、使ってたくせに。

「じゃあ薬は?作れない?」

「薬?」

「恋に落ちる薬は作れないのかな?」

まだ湯気の出る紅茶を見つめ、カップに手を添える。

「一口飲んだら目の前の人を好きになっちゃう薬!」

カップを上げて口元まで持って行く。

「満月おばぁちゃん作れないかな?」

「そんなの作ってどうするんだよ」

「穂月のコーヒーにこっそり入れようかな、なんて♡」

にひっと笑って見せた、なんてね!って冗談交じりに。

「そんなのいらないだろ」

あっさり返されてちょっとさみしかった。  

別にしないけどさ、そんなことたとえ満月おばぁちゃんが作れてもさ。


まぁふわーっとあたしの気持ちをね?


ふぅっと息を吐いて、ごくんとひとくち紅茶を飲んだ。

「もう入ってるかもよ?それに」

「え?」

ニッて逆に笑って返された。

思わず紅茶二度見しちゃった。

「入ってるわけないだろ」

「からかってる!わかってるもん、そんなのできないってわかってるもん!!」

ゴクゴクーッて一気に飲んでやった。  
自分で言い出しといてなんか飲みづらくなったから。

もういい!これでもうこの話は終わり!!って、紅茶を流し込んだのに。


「そんなもんなくても落ちてるよ」


残りのコーヒーを静かに飲んだから。

ぶわって顔が熱くなる。

やっぱ一気に飲むんじゃなかったかもしれない、まだ喉がカラカラだった。


ふって笑いながらあたしを見る。  



「魔女は何でも出来るんだよ」



それは昔、ヨーロッパの方では魔女が存在したらしい。

病気や怪我を治したり、失くしたものを見付けたりと人々を助けて来た魔女がー…




きっと今もどこかに、ひっそりと生きている。



気付いていないだけで、知らないだけで、近くにいるかもしれない。




あたしはそうだって信じてる。





魔女が大好きだから。