「じゃ、緋呂は今からレースがんばれよ」

スッと穂月が立ち上がった。

「えっ、いや、あたし出れなくなったって…っ」

気付けば触れていた穂月の手は離れていた。

触った感触もないぐらい不思議な感覚だったけど、いつのまに…


全然気付かなかった。



けど?



「わっ」

穂月があたしの右手をグッと引っ張った。

勢いよく引っ張られたから、踏み込んで立ち上がることになっちゃって…


でも足!!



捻挫した足!!!



「痛ッ…くない?」


ん…?


普通に立ってた。

さっきまであんなにジンジンしてたのに、全然…


え、どうして?


ハッとして穂月の顔を見た。


だってこれはもしかして!?きっと…!?


そしたらくすって笑って、あたしの耳元の近付いた。



「俺は魔女だからな」



や、やっぱり魔女はいる。

困った人を放っておけない…



ううん、あたしだけの魔女が。



「がんばれ、緋呂」


おでこに優しく唇が触れる。

スーッと何かが体に溶けていくみたい、あたしもう大丈夫だ。


走れるよ、今なら誰にも負けない。