「あ、コタちゃんは猫ちゃんの名前ね!大村くんところのコタちゃん!」

え…大村???

「おばぁちゃん、大村のこと知ってるの!?」

思わず大声出しちゃった。カラスにシャーって怒られた。

「緋呂たちと同じクラスだって聞いたけど、大村くんからコタちゃんのこと聞いてる?」 

「そんな話1回もしたことないけど、なんでおばぁちゃんが大村と話してるの!?え、いつ!?いつ話したの!?」

なんで満月おばぁちゃんと大村が、てゆーかあの大村?同じクラスの大村ならあの大村しかいないけど…

“あいつのばーさん、全身真っ黒の闇みたいな服ででっかい傘さしてよく猫と話してんじゃん”

そーいえば大村は満月おばぁちゃんのこと知ってた、近所の人なら知ってるし有名だから知ってるんだって…って思ってたけど実は話したことあるから知ってたの??

しかもコタちゃんって猫飼ってるんだ。それで満月おばぁちゃんと…

「ちょっと前にねぇ、コタちゃん抱っこした大村くんに会ったのよ。コタちゃん1人で家を飛び出しちゃったみたいで足を怪我しててねぇ…大村くん悲しそうにしてたから」

「……。」

それは…あの大村でも心配になるよね。大事なコタちゃんがケガして見付かったなんて。

「だからおばぁちゃんちょっとあれしてね」

「魔法でしょ、それ魔法使ったんでしょ!」

「そしたら大村くん驚いちゃって」

「あたり前だよ、知らない人からしたら怖…っ」


…怖い?


今あたしそう言おうとした?
怖いって、思って…

「だからちょっと気になってたの、大村くんもコタちゃんもどうしてるかなぁって」

「……。」

持っていたカップを静かに置いた。両手できゅっと握って、ハーブティーに映る自分の姿を見ながら。

そっか、それで大村はあんな言い方したんだ穂月に。

大村は思ったんだよね、きっと怖かったんだ。でも…

“まぁでも猫には優しいんじゃねーの?”

「わかった、じゃあ今度大村に聞いとく!」

「緋呂、友達なの?仲良いいの?」

「うん、まぁ…そう!」

ではないけど、今の話でなんとなくわかっちゃったし。カラスいじめてた理由もわかりたくないけどわかっちゃった。

自分だって猫飼ってるのに黒猫のカラスをいじめてた理由…

“黒猫が好きとかなんとか言うけど、そんなこと言ったら黒猫飼ってるヤツ全員魔女になるじゃねーか”

1番信じてたのは大村だよ。

魔女と黒猫の関係知ってたんだもん。

そしたら仲良くなれそうな気がしたよ。

あたしも信じてるもん。

「じゃあ聞いといてちょうだい」

「うん!」