初めて穂月とケンカしたかもしれない。


もうずっと一緒にいるけど、あんなふうに言い合ったのは初めてだった。

あまりにあたしたちの言い争う声がうるさいからあの後血相を変えたママが飛び込んで来た、それ以上は何も言えなくなって大人しく帰らされたけど。

「……。」

思えばいっつもあたしに付き合ってくれた。

だから振り回しちゃって、つらい思いもさせてた…


よね?


「あ…」

「…チッ」

「ちょっと人の顔見て舌打ちって何!?おはようでしょ、朝なんだから!」

学校に着いて下駄箱で上履きに替えようと思ったら先に下駄箱に着いてた大村がこっちを見て舌を鳴らした。

「なんでお前におはようなんて言わなきゃなんねーんだよ」

「クラスメイトじゃん、言っといてもいいと思う!」

「……。」

ふんっと目を逸らして下駄箱から上履きを取り出した。

ほんとッ可愛くないやつ!いつもより遅く来ちゃったからここで会っちゃったのツイてない!

「十六夜は今日も車かよ」

「え?あー…今日も天気いいからね」

「VIP待遇かよ」

はぁっと嫌らしく息を吐いた大村が鼻に着いたけど、あんまり強くは言えなかった。あたしも似たようなもんだもん。

穂月のこと、可哀想だって…

「あ、そーいえば大村って魔女に詳しいんだね。知らなかったよ、魔女狩りとか裁判とか」

「魔女なんていねぇよ」

バンッと叩きつけるように上履きを置いてあたしの声を掻き消した。

「大村が言ってたじゃん」

「魔女はいねーよ」

「魔女はいるし!」

「いつの話してんだ」

「昔はいると思ってるんだ!」

「……。」

たぶん今のはイラっとした。トンッと上履きを履いた大村が一瞬あたしを睨んだから。

「魔女なんて神話だよ、おとぎ話!黒猫が好きとかなんとか言うけど、そんなこと言ったら黒猫飼ってるヤツ全員魔女になるじゃねーか」

ハァと息を吐きながら下駄箱から離れようとした、てかそれ知ってる時点でかなり詳しいと思うんだけど。

あと好きなわけじゃなくて遣いね!黒猫を遣いとしてるのね!

「まぁそれは置いといて!大村って魔女のことよく知ってるんだね!」

「置いとくなよ!」

「実は好きなんでしょ?」

「好きじゃねぇ!!」