「朝見さん!」

1階に着く最後の階段を下りた時、廊下を歩いて来た中野先生に呼び止められた。

「今日は部活も休みなのに遅かったのね」

「あーはい、図書室に行ってたんで…なんですか?」

「うん、ちょっとね…十六夜くんとは何か話した?」

「穂月と…?」

あ、授業無理やり抜け出したやつだ!
頭痛いなんて大嘘ついて教室から出て行ったから、中野先生気にしてたんだ…!

「あ、あれはっ…まぁなんか…」

説明が難しい。

今ここで魔女狩りの話する?違うよね??

「えっとー…」

「先生ね、最初からテントはない方がいいと思ってたのよ」

「え…?」


あたしは穂月にも参加してほしかった。

体育祭を見てほしかった。


1人で保健室にいないでほしかった。


それだけだったの。


「どうして…ですか?」

「だってみんな元気に走ってる姿見たら辛いでしょ?」


…そんなこと考えてなかった。

一緒に楽しめるもんだと思ってた。


そこにいるだけで、体育祭を感じられるものだと思ってた。


“それは…大丈夫だけど、十六夜くんはそれでいいの?”

だから穂月に聞いたんだね。
あたしが何もわかってなかったから。

そこに穂月の気持ちは…

“え…あ、はい”



それから穂月は保健室にいることが増えた。 

来週に延びた体育祭の練習の日々で、保健室にいることしかできなかったから。