「嵐や地震が起きればそれは魔女の仕業、魔女にはそんな力があるって」

そんなこと、聞いたことなかった。

あたしの中で魔女は憧れでヒーローみたいな存在だったから。


そうだったの…?


本当に魔女が…

魔女はみんなを助けて来たんじゃないの?

本当はみんなを苦しめて来たの?


「だけどっ、病気を治して来たんだよね!?ケガだって治せたって…っ」

疑いたくなかった、そんな風に思たくなくて。でも穂月は冷静だった。

「病気が治れば魔女のおかげ、病気が悪化すれば魔女のせい」

「…っ」

「そう言われて来たんだよ」

なにそれ…


じゃあ全部、魔女が悪いの?


魔女がよくないみたいじゃん、そんな風に聞こえるんだけど…

“何かあったら言いな、緋呂のことはいつでも守ってあげるから!”

でもあたしの知ってる魔女はそんな人たちじゃないよ。


あたしの信じて来た魔女はそんな人たちじゃ…!


「…魔女は雨を降らせるの?」

「そんなこと出来ないよ、天候は自然現象だ操れるわけない」

「じゃぁっ」

「でも魔女のせいなんだだよ」

穂月のあたしを見る目は鋭かった。
グッと力が入って、言葉が詰まっちゃった。

「そうゆう存在がいた方が都合いいだろ?」

都合がいい?
ってどうゆう意味?

なんの都合がいいの…?

「人ってさ、何か嫌なことがあったり間違えたりすると誰かのせいにしたくなるだろ」

ふぅっと息を吐いた穂月が窓にもたれかかった。

まだ雨は降り続いて外ではビュービューと風も吹き始めた。

「早起きしなきゃいけなかったのにお母さんが起こしてくれなかったから遅刻したのはお母さんのせいだ!みたいなあれな」

「それとこれとは…全然違うくない?それとはちょっと…」

「一緒だよ、本当は晴れだったのに魔女が中止にさせたいから雨を降らせたんだ~って」

「………。」

穂月があたしの方を見た。

しっかり見つめ合うように視線を交わした。

え、それは…

「まぁ別に俺は体育祭を延期させたいとも中止させたいとも思ってないし、つーかそんな力最初からないわけだし」

すぐに逸らされた視線は空の方へ行ってしまった。窓の外を見つめ、どんよりとした真っ暗な空を見て薄っすら微笑んだ。

「いいことも…悪いことも全部魔女のせいだ」

魔女のせいだなんて、そんなの言いがかりじゃん。

勝手にみんなが決めつけただけじゃないの…

「だからあながち間違ってないかもな、大村の言ったことも」


穂月はそう思ってるの?

ずっとそんな風に思ってたの?


あたしが魔女のことを口にするたびに、どんな思いでいたの…?


「太陽の下を歩けないのはそうやって人々を惑わした罰かもしれない」