「十六夜くん専用のテント?」

学校へ着いて早々そのまま職員室まで直行した、穂月の手を引いて担任の中野先生のところまで。

「はい!PTAの人とかケガした人とか、先生たちもいるじゃないですか!白いおっきいテントみたいなあれです!」

正式名称はわからないけど、三角屋根のパイプで組み立てる式のあれ。他にも余ってないのかなって思って、そこから穂月が体育祭を見られるような場所を作れたら…

「それは…大丈夫だけど、十六夜くんはそれでいいの?」

「え…あ、はい」

「十六夜くんがそうしたいって言うなら、今度の会議で提案してみるけど」

「ほんとですか!」

あ、しまった。穂月より先にあたしが喜んじゃった。

「当日は気温もすごく上がるから水分はしっかり取って熱中症には気を付けてね、巴先生とも相談して体調をしっかり見て応援していきましょうね」

やった、よかった。
どうして今までこれが思い付かなかったんだろう。

こんなに簡単にグラウンドに出られたのに…!

「穂月も体育祭参加できるの嬉しいな~♬」

「何の種目にも出ないけどな」

「参加だよ!保健室から見るのと景色全然違うじゃん!」

中野先生にお願いしますって言って職員室から出た。廊下を歩けば雨の音がザーザーしていたけど、気分はるんるんでいつになく朝からテンション高めだった。

「自分のクラス応援するのも楽しいよ!負けたら悔しいし勝ったら嬉しいもん!」

ねって隣を歩く穂月に笑って見せた。
これで穂月にも中学最後の体育祭、いい思い出ができたらいいなって。

「そうだな」

「そうだよ、絶対!」

あたしに微笑みかけてくれるのがうれしかった。 これであたしはもっとかんばれるから。

「リレー優勝するから、見ててよね!」

体育祭当日、楽しみ!



…って、思ってたんだけどなぁ。