「大変申し訳ありません…!」

「いえいえ、巴先生は悪くありませんから」

「いえ、私がちゃんと十六夜くんのことを見ていなかったので…っ」

保健室に戻ると月華ママがお迎えに来ていて、巴先生は血相を変えてこれでもかってぐらい頭を下げていた。
月華ママはにこにこして別に怖いわけじゃないけど、預かった責任ってやつだと思う。

あれからこんちゃんが猪熊先生を呼んで来てくれてここまで穂月を運んでくれた。

今は愛くるしそうに猫を抱っこして頭をなでてる猪熊先生は顔がほくほくしてる。大村たちへのお説教はもう終わったのかな。

「少し体がびっくりしただけで、そこまで問題もないですし大丈夫ですから」

自分で歩けないぐらいぐったりした穂月は今現在ベッドの中で顔までふとんをかぶってくるまっている。
その前に置いてあった丸椅子に座った。

「今後はこのようなことがないように気を付けます」

「巴先生、頭を上げてください」

「いえ…っ」

「息子が勝手に飛び出して行ったんですから、悪いのは息子ですよ」

ううん、違う。

違うよ、悪いのはあたし。

あたしが後先考えずに走って行ったから。

こんちゃんにも1人じゃ危ないって言われてたのに、突っ走っちゃったから。

「ごめんね、穂月…」

膨らんだふとんの前、静かに口を開いた。

「あたしのせいだよね」

あたしを心配して来てくれた、あたしが無茶しようとしてるんじゃないかって思って。

穂月が太陽の下にいられないことは誰よりわかっていたつもりだったのに。

「穂月無理しないでよ…っ」


でも、もしね?

あの時…
自分に何かあるより、穂月に何かあった方があたしは嫌だよ。


穂月がいなくなっちゃたら嫌だよ。