〇廊下



移動教室のため移動していると、目の前から圭人が現れる。



夏奈「あっ、月島くん!移動教室?」



圭人「夏奈先輩。そうですけど・・・どうかしました?」



歩み寄りながら夏奈に答える圭人。



心なしか、少し嬉しそうな圭人。



夏奈「いや、月島くんが見えたから声掛けただけ。ダメだった?」



圭人「ダメなわけないじゃないですか。嬉しいです、先輩から声掛けてくれるの」



夏奈「本当?良かった」



満面の笑みを圭人に向ける夏奈。



その笑みを見てドキッとする圭人。



圭人「・・・夏奈先輩は、彼氏とかいますか?」



夏奈「え?いないよ?」



圭人「・・・好きな人も?」



夏奈「うん。いない。急にどうしたの?」



突然の問いかけにハテナを浮かべる夏奈。



夏奈の答えに少し残念そうな顔をする圭人。



圭人「いえ、気になったので。ダメでした?」



夏奈「いや、ダメじゃないけど・・・((どうしてそんなことが気になるんだろう・・・でも、聞いたところで答えてくれなさそう))」



圭人「でも・・・そういうことなら僕にも可能性ありそうですね」



フッと笑みを浮かべる圭人。



夏奈「・・・可能性?」



不思議そうにしている夏奈。



圭人「・・・ハァー・・・これだからバカって言われるんですよ」



溜息をつきながら、困ったように眉を下げる圭人。



夏奈「どっ、どういう意味!?またバカって言うし!!」



圭人「バカですよ、本当バカ。こんなに伝えてるのに全っ然気付かない、大バカ者でチビのアホ」



夏奈「何もそこまで言わなくても・・・!!」



圭人の言葉がグサグサと体にささり、ダメージを受ける夏奈。



圭人「・・・でも・・・そんなところも好きですよ、僕は」



少し間を開けて意を決したように夏奈を見つめて言葉を紡ぐ圭人。



少しだけ頬が赤くなっている。



夏奈「なぐさめるぐらいなら貶さないでよ、もー」



圭人「・・・伝わってないし・・・本当バカ、鈍感」



夏奈の反応に、ガクッと肩を落とす圭人。



夏奈「ほらー!!すぐにバカにする〜!!」



ムスッとしながら圭人の事を見つめる夏奈。



圭人「バカにしたくもなりますよ。まったく・・・」



夏奈「!」



困ったように笑う圭人。



その表情を見て、目を見開く夏奈。



夏奈「((月島くんの今の表情・・・どこかで見たことあるような・・・))」



圭人「移動教室あるんでそろそろ失礼しますね」



夏奈「あ、う、うん!またね!」



手を振って圭人と別れる夏奈。



だけど、圭人が去ったあとも夏奈は手を顎に当ててどこで見たのかを考えていた。