〇夏奈の家の近く



電車を降りてから手を繋ぎ、夏奈の家まで歩いていく。



夏奈「ねぇ、月島くん。私この道真っ直ぐ行ったらお家つくんだけど・・・もしかして、お家まで送ってくれるの?」



隣にいる圭人を見上げながら言葉を口にする夏奈。



圭人「いえ、僕の家もこの近くなのでついでです。先輩、迷子になりそうなので」



夏奈「さすがに迷子にはならないよ!?」



圭人「・・・前は迷子になったくせに・・・」



夏奈「?どーしたの?」



視線を逸らしながらボソッと呟く圭人。



その言葉は夏奈には届いていない。



圭人「いえ、なんでもないです。ここですよね、先輩の家」



家の前に立ち止まる2人。



そこには“篠原”という表札がかかっている。



夏奈「うん!送ってくれてありがとね」



圭人「いえ、僕が先輩と一緒にいたかっただけなんで」



繋いでいた手をキュッと握りしめながら夏奈を見つめる圭人。



夏奈「・・・?そっか!ありがと!」



よくわかってないけど圭人に向かって微笑む夏奈。



その様子を見て苦虫を噛み潰したような表情をする圭人。



圭人「・・・全然伝わんない・・・」



夏奈「?なにが?」



圭人「・・・なんでもないです。じゃ、また明日」



名残惜しそうに手を離しながら挨拶をして、歩き出す圭人。



夏奈「うん!バイバーイ」



大きく手を振りながら圭人を見送る夏奈。



夏奈「((月島くん、結局お家まで送ってくれたけど・・・月島くんのお家ってどこら辺なんだろう・・・))」



圭人の背が遠くなってから、手を振るのをやめて考え始める夏奈。



夏奈「((かなり遠いところだったら少し悪いことしちゃったかな?))」