結局その日、俺とカレンは二人で三本もワインを開け、酩酊状態に近い彼女を俺は近くのホテルまで送っていった。
もう、長い時間タクシーに揺られてグラマシーまで帰るのは吐きそうだと言うから、そうしたほうがいいと思った。
長い髪をかき上げてからよろけ、俺に支えられながらカレンは、心底困ったようにため息をはく。

「今日のことは忘れて。最低の上司よね」
「忘れないよ。今は勤務時間外。社内でもない」
「忘れてよ」
「嫌だ」
「……いつもはこんなじゃないのよ。ホントよ。楽しかったのよ。ホントに楽しかった……」

ホテルの部屋まで抱えるようにして上がった。
スタンダードクラスのシングルで、狭い部屋には大きいとはいえないベッドがひとつ置いてあるだけだった。