「だってわたしばっかり好きな話してセイジはずっと聞いてくれてるから。ほら、セイジも喋りなさいよ。もっと飲みなさいよ」

崩れてくる口調が嬉しい。

「俺も楽しいよカレン。俺もこんなに楽しいのは日本を出てから、いやここ数年なかったかもしれない」
「えー!!ホントかなぁ? 日本に可愛い彼女がいて、もう結婚秒読みなんじゃないの?」

胸の奥で、記憶が鈍くきしんで痛んだ。
でもそれは決して鋭くはなく、すべすべして丸く穏やかな、心地よくさえある痛みだった。
その穏やかな痛みを不思議に思う。

まだ傷が癒えるには、充分な時間がたったとは思えないのにな。