「悪いわね。赴任早々がんばってくれたから、ホントはホテルの日本料理でも連れてってあげたいんだけど、さすがに給料前で懐があやしくてね。でも味は確かなのよ」
店員がメニューを置いて引き下がると、俺に耳打ちするようにカレンはそっと囁いた。
「充分ですっていうか、あなたに奢らせるつもりなんかありませんよ」
今日も、俺と二人の今は胸元のボタンは一番上を覗いてきっちりと留まってる。
二人の時と人前……できれば逆にしてほしい、なんてことを知らず知らずのうちに考えている自分に気づき、かすかに苦笑いになる。
でも今さら、きついなら外しても、なんて言うわけにもいかないし……。
「飲めるほう?」
カレンがメニューを開きながら、手元に視線を落とす。
「それなり、ですかね」