それが赴任間もないニューヨークでもう二人。
俺には、やっぱり、ニューヨークという街が合っていないんだろうか。
それにしても、カレンが俺と二人での食事の誘いを、当たり前のように引き受けてくれたことに、思いのほか浮き立っている自分の気持ちがおかしい。
◇
そろそろ恋しくなる頃じゃない? と茶目っ気のある表情で俺をのぞき込み、カレンが先に立って足を踏み入れたのは日本料理の店だった。
穴場かな、と思うほど目立たない入り口だったけれど、予約がなければ入れないだろうことは明白だった。
料理の味はお墨付きなのか、客の半分は日本人だ。
だからといって入るのが料亭なみのハードルの高さだというわけではなく、しいて例えるなら、高級居酒屋のような雰囲気だ。