転ばせかねない動作をしたのは俺なんだけど、何をカレンは謝っているんだ。


「あてつけみたいなことして」
「ああ……」

そういうことか。

「…………」
「あてつけみたいなこと、じゃなくて、あてつけ、でしょ?」

俺をちらりとも見ないでまっすぐ外に目を向けるカレンは、いつもの男勝りな様相は影をひそめ、どこかひたむきで女らしく……息をのむほどに美しかった。
それが俺の神経を余計に逆撫でする。

あいつのことが絡むと君は性格が変わるのか。
あいつのことになると君はそんな表情をするのか。

「ごめん、なさい」

さっきよりもっと小さな声で、まるでため息のようにカレンは呟いた。
素直に二回も謝るってことは、あれが、あてつけだと完全に認めるということか。

「もうしないでください。気分のいいもんじゃない」
「…………」