いつもの、ううん、いつもよりもっと優しい言い方でセイジが口を開いた。
この人、本当にわたしを心配してくれているの? 
自分の幸福にしか興味がない人型コンクリートの森の中で、そういう優しさが本当に存在するの?
らしくない涙がこみ上げそうになり、それをどうにか飲み下す。

こんなところで部下に言いくるめられてどうするの、わたし。
わたしは奥歯に力を入れると無理に挑戦的な表情をつくり、セイジを見上げてまたボタンに手をかける。

ひとつ外そうとし、指が震えてうまく機能しないことに心底戸惑った。
そのまま、わたしは途方に暮れてしまい、右手を下ろすこともできず、妙な形のまま宙ぶらりんにさ迷わせていた。



「カレン? カレンか?」
「ジョージ……」

駐車場のほうからの声にわたしの身体は硬直し、自然と右手も下がる。
ジョージだった。

「ジョージ?」