「ここは駐車場からの地下通路。うちの会社がほとんどだけど、いくつか他の会社が間借りしてる。ここは、いわば共有スペース。社外だ」

自分の顔から血の気がすっと引いていくのがわかった。
まさかこんな温和な男が豹変するの……と思い終わらないうちにわたしの腕は開放された。

「この間の契約でもわかっただろ? 男はあなたの女性的な魅力に惹かれて仕事をまかせているわけじゃない」
「放っておいてちょうだい」

「そりゃ、そういう輩がゼロかと言えば保証はできない。だけどね、あんな男をそそるような格好をしてまで、とらなきゃならない契約はいらないんじゃないの? いらないと判断したって数字にきっと変化はないよ」
「……」
「あなたは自分を過小評価しすぎだ。みんなあなたの仕事内容を評価して、契約書にサインをしているんだ」