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埃っぽい資料室は地下にある。


最近の資料は全てデータ化されてパソコン内に入っているから、日常必要のない資料ばかりが保管されているここは、会社の中で完全に化石化している場所だ。

当然、ここを訪れる人は極めて少ない。
地下には巨大な駐車場とこの資料室しかなく、人口密度が高いのは前者のほうだ。




「さすができる男は資料を探すのも早いのね」

初めて入る場所だろうに、セイジはものの十分で、わたしが指定したファイルを手に資料室から出てきた。
わたしは駐車場からビル内に入る、エレベーターへの道筋にもなっている廊下に背中を預け、腕組みをしていた。
聞かれたくない会話は日本語でする。

「やっぱりこんな資料、必要なかったんだ? こんなところに男を呼び出してなんの誘惑ですか? カレン」