わたしは海沿いの歩道を彼に手をひかれて歩きながら、止まらない涙に辟易していた。


「泣くなよカレン」


「泣くわよ。何年待ったと思ってるのよ」


「君が俺の携帯を全部ブロックしたままだからだろ?」


「そうすれば、焦って早く来てくれると思ったからじゃない」


「全く勝手だよ。勝手にいなくなったくせに」


わたしは小さく彼の名前を呟いた。


毎日毎日、お祈りみたいに口の中で唱えていた名前を、本人に向かってまた呼べるようになる日がくるなんて、夢のようだ。


「結婚しようカレン」


「嫌よ、こんな計画性のない男」