ものすごく高そうだ、いや高いに決まっていることを、ニューヨークの女性なら誰でも知っている。


「俺、ずっと飛行機に乗ってたから眠いんだよ。遠いなあ、やっぱりヨーロッパは。飛行機で上手く寝られないタチなんだ。ちゃんと寝たい。カレンのアパートに連れてってくれよ」


「ホテル、取ってないの?」


「取ってないよ。そんなの取ってるわけないじゃない」


「勝手ね」


「聞いたんだろ? ジェシーから全部さ」


「聞いた、けど」


「じゃ行こ」


そう言って彼はさもあたりまえのように、わたしの手をひき席をたった。