「え?」


彼はピアスの入っていた箱とは違う箱をあけた。


そこには指輪が、今、彼が左手の薬指にしているのと同じデザインのシンプルな指輪が入っていた。


「これ、って……」


「おみやげだよ」


そう妖艶な表情でささやくと、おもむろに煙草を灰皿に押しつけてもみ消し、彼は強引にわたしの左手を掴みあげて薬指に、箱から取り出した指輪をはめた。


「え……?」


これは、どう考えてもただのおみやげじゃない、でしょう?


わたしはその箱に書かれている高級宝飾ブランドの名前を何度も確認した。


ニューヨークの五番街にあるハリー・ウィンストン本店のものだ。



デザインは目の前の男が左手の薬指にしているのと同じだけれど、わたしのほうの指にはめられた指輪にだけ、小粒のダイヤが埋め込んである。