「お嬢さん、席をご一緒してもいいですか?」 大型トランクを引っ張った若い長身の男がわたしの前に立つ。 逆光で顔がよく見えなかった。 わたしは陽の光を遮るように手をかざし、目の前の男を静かに見つめた。 そして、ゆっくりと言葉を紡いだ。 「……どうぞ」 その男はわたしの前の席に腰を下ろすと、長い足を組み、おもむろに煙草を取り出して火をつけた。 左手の薬指には真新しい指輪が光っている。