ニューヨークで時間に追われて生きることが身体に染みついていたわたしには、のんびりすぎるくらいのこちらの生活速度に最初はかなり戸惑った。


それなのにたった二年でいまではもうすっかりこんな具合だ。


商談帰り、社に戻らず、お気に入りのカフェで一人息抜き。


イスタンブール支社長として、百人からの人間を束ねる身分だけれど、こちらの民族の人柄に合わせてうまく順応してやれていると、自分に及第点を出している。



そんなわたしの生活圏を、ジェシーはたまにこうやって覗こうとする。


このボスボラス海峡の深い海の色を、長期休暇をとってダンナ様と今年中には見に来る予定になっている。


ニューヨークに比べればのんびりな場所だけど、有形遺産だけは本当に素晴らしいから、ジェシーがきたらいろいろと案内がしたい。





半年前、ようやくパパは空港の地上勤務に復帰した。