一方、最悪だったのが女に白羽の矢を立てられた悠馬だ。


彼女がいるというのに、自分を思うもうすぐ死んでしまう裸の女に一度きりでいい、と泣かれ、断れずに関係を持ってしまった。


死という触れたことのないものの前に愛情と同情の区別がつかず、初めての体験に愛と欲の区別もつかなかった。


そして自分が彼女の支えにならなければ、と思いつめた。


同級生の彼女とは別れ、その女に呼び出されればいつでも駆けつけるようになってしまったのだ。


部活中。夜中。それこそ、朝、昼、晩。


意のままになるおもちゃを得た女の呼び出しは、エスカレートしていった。


悠馬は受験もある三年生だというのに学校があってもおかまいなしに抜け出し、心身ともに疲労困憊していた。


そんな悠馬を、胸を引き裂かれるような思いで見ていたのが、彼から別れを告げられた彼女だ。


その子が、朝希ちゃん。

悠馬と同じ陸上部に所属する純真な子だった。


このままでは悠馬が高校受験も危ういと、彼の身辺を探り始めた。


悠馬の後をつけたのだ。

そして、悠馬の知らないこと、優馬が疑ってもみなかったことまで突き止めた。