俺は指輪、婚約指輪を勝手に作った時の、その注文書を開いた。
もうこんなものが残っていることさえすっかり忘れていた。
だから俺はそれを、たぶん服のポケットか何かに二つ折りになって入っていたそれを、本のしおり代わりに使っていた。
詳細の書いてあるほうを内側にしていたから、見た目はただの白い紙で、俺は日本で最後にかかった病院の調剤薬局の領収書だと思い込んだままだった。
使い始めた頃には、もう俺にとってこの子、朝希ちゃんのことは完全に思い出になっていた。
「Asaki? それ、日本人の名前でしょ? 指輪の裏に彫ってくれっていう依頼の欄よね? To Asaki From Seiji」
「そうだ」
「恋人、ではなかった、ってこと?」
「カレンに……、ちょっと話したことがあるんだけど、俺は女でいい思いをしたことがホントになかったんだ。日本にいた頃」
もうこんなものが残っていることさえすっかり忘れていた。
だから俺はそれを、たぶん服のポケットか何かに二つ折りになって入っていたそれを、本のしおり代わりに使っていた。
詳細の書いてあるほうを内側にしていたから、見た目はただの白い紙で、俺は日本で最後にかかった病院の調剤薬局の領収書だと思い込んだままだった。
使い始めた頃には、もう俺にとってこの子、朝希ちゃんのことは完全に思い出になっていた。
「Asaki? それ、日本人の名前でしょ? 指輪の裏に彫ってくれっていう依頼の欄よね? To Asaki From Seiji」
「そうだ」
「恋人、ではなかった、ってこと?」
「カレンに……、ちょっと話したことがあるんだけど、俺は女でいい思いをしたことがホントになかったんだ。日本にいた頃」