「俺は充分落ち着いてるよ!」


スーツのポケットを探ったけど、そこに煙草が入っていないのを苦々しく思い、小さく舌打ちがでる。


「もう……。今のセイジをカレンが見たら、自分の罪深さを懺悔する気持ちにもなると思うんだけどなぁ」


「あたりまえだよ。こんなの、ひどい裏切りだよ」


「そうなの? カレンはセイジに裏切られたと思ってニューヨークを出たのよ?」


「は?」


「これ! あたしにどういうことか説明してくれない? あたしだったらカレンよりは冷静に判断できるから」



ジェシーはガサガサと自分のバッグから何かを取り出し、それをテーブルの上で、俺の前に押し出すようにすべらせた。


本。俺がカレンに貸した、英字で書かれた文庫本だった。