「$10000000の契約をくださった時ですよね。冷静にしてらしたじゃありませんか」


「年端もいかない小僧に、そこまでみっともないところを見せるわけにもいかんだろう? マンハッタンじゃ少しは名前の知れているわたしだよ」


「カレン……」


怯えるようにわたしに寄り添うジェシーの手に、わたしは手を重ねながらうつむいた。


「考えさせてください」


モトムラは席をたった。


「ゆっくり考えるといい。君が海外に憧れていることはわかっていたからね。老将にはこのくらいのことしかしてやれない」


「そうなんですね……」


商談時のたわいない雑談、その会話の端々からそれを感じとっていたのなら、モトムラがわたしを想っていてくれたというのは、本当なのかもしれない。