「そう。重役クラスのポスト、海外の支社長だよ。海外の支社長はやっぱりこのニューヨークに比べて人気とは言えないからね。華やかじゃない場所は特にね」


「そう、なんですか」


「いくつか候補はある。デリー。ハノイ。バンコク。イスタンブール」


「イスタンブール?」


「そうだ。ただイスタンブール支社は今情勢が不安定で、一時的にブルガリアに拠点を移している」


「情勢が安定すれば、イスタンブールに事務所は戻るんですか?」


「そうだろうね」


支店長クラスの年棒を書いた紙をモトムラはわたしの前に置いた。



「カレンっ!! 落ち着いてよ! あんたを家族やセイジから引き離すのよ? 何を考えてるのかわからないわよ? この人」


そうかな?

じゃあどうしてモトムラは日本語じゃなくて、わざわざ英語で話しているの?